「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」【私の読書記録Vol.4】

 

 

このブログのタイトルに引用したのは、今回紹介する村上龍の小説「希望の国のエクソダス」の作中で、主人公の中学生の一人”ポンちゃん”が参考人招致された衆議院の予算委員会で「全世界」に向けて発した言葉です【文春文庫「希望の国のエクソダス」314ページより】。

 

2002年の秋に、日本全国で中学生たちが突如不登校になったことについて取材することになった週刊誌のフリー記者セキグチは、取材を進めていく中で横浜のある中学校の”ポンちゃん”をリーダーとするグループと出会います。

 

フリー記者セキグチの視点を通して、学校に行かなくなった日本全国の中学生たちが、インターネットを駆使し、全国の中学生を繋げるネットワークを作り、多方面にネットビジネスを展開し、大人たちが恐れる大変大きな勢力へ成長を遂げ、北海道に理想の国を作るという日本からの「エクソダス」を、壮大なスケールで描いています。

 

また、停滞する経済のこと、学校教育のこと、メディアの報道のあり方など様々なテーマを鋭い視点で取り上げています。以前このブログで紹介した「ヒュウガ・ウイルス五分後の世界II」(4月25日付ブログ「並行世界の日本で繰り広げられる、ウイルスと人間の戦い。【私の読書記録Vol.1】」もぜひどうぞ!)から続く村上龍の危機意識がこれでもかと言わんばかりに伝わってきます。単行本が刊行されたのは2000年、文庫化が2年後、物語の設定は2002年の日本ですが、今読んでも新しさを感じる近未来小説だと思います。

 

最近のテレビやネットを賑わせている様々なニュースを見ながら、ふと上に引用したポンちゃんの言葉が頭に浮かび数年ぶりに再読したのですが、やっぱり面白くて一気に読んでしまいました。

上の言葉のすぐ後、衆議院議員のサイトウ先生とポンちゃんとのやり取りの中で、ポンちゃんがサイトウ先生に発した言葉が痛快なので最後に引用して今日のブログを締めようと思います。

 

「今の政治家の生き方を真似ろ、今の政治家のように生きればいいんだと、なぜぼくらに向かって大きな声で言えないんですか?サイトウ先生、いかがですか?」【316ページより】

 

サイトウ先生はポンちゃんに何と答えたのか、答えられなかったのか、、

 

もし興味がわいたという方は、この機会にぜひどうぞ。

 

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