並行世界の日本で繰り広げられる、ウイルスと人間の戦い。【私の読書記録Vol.1】

危機感を持って今を生きるために。

 

村上龍の小説「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II」を再読しました。

 

私にとっての村上龍の小説は、書店員だった頃に読んだ「希望の国のエクソダス」が初めてで、それから「半島を出よ」「五分後の世界」「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II」「インザ・ミソスープ」「空港にて」「愛と幻想のファシズム」「歌うクジラ」「オールド・テロリスト」と読み、以上で全てですが、この中で五分後の世界の二部作がとりわけ好きな作品です。

 

ヒュウガウイルスは五分後の世界の続編という位置付けですが、二部作続けて読むのはもちろん、この作品単体で読んでも十分に読み応えのある面白い作品となっています。

 

現在より五分間時空がずれた世界の日本は、太平洋戦争で国土全体が焦土と化し、大日本帝国が消滅して、人口が26万人まで減り、分割統治された国土の地底にトンネルを張り巡らし、駐留する国連軍を相手に各地でゲリラ戦を繰り返しながらも、高度な文化、芸術、科学で世界中から「アンダーグラウンド(作中の日本の呼称)」と称賛される戦闘小国家となっていました。

 

そんな日本の九州東南部の歓楽都市「ビッグ・バン」で、点状出血、眼球や内臓の溶解、全身の爆発的な筋ケイレンの後に吐血して死亡する原因不明の感染症が発生します。「アンダーグラウンド」は、ビッグ・バンの血液交換センターにいる生存者の救出のために細菌戦の特殊部隊を現地に送り込む作戦を決定しますが、物語はこの作戦に同行するCNNの白人女性ジャーナリスト、キャサリンの視点を通して進んでいきます。

 

圧倒的な想像力で設計された五分後の世界の中での、アンダーグラウンドの組織としての行動原理や意思決定のメカニズム、地底で暮らす人々の生活、途中発生するゲリラ戦の描写、そしてビッグバンで繰り広げられるウイルスと人間との戦い。全てが圧巻でした。圧倒的な危機感をエネルギーに変えて生きてきたものだけが克服することができるヒュウガウイルスは、今現実に自分の目の前に起こっている新型コロナウイルス感染症の問題に、自分なりにどう向き合うべきか改めて考え直す機会を与えてくれました。

 

いやー、今読み直してよかったです。このブログを書いている時点でAmazonを見てみると新品は在庫切れになっていましたが、中古だと200円程度で購入できるようです。長さも250ページとちょっとなので、週末の読書、おうち読書にはちょうどいいのではないでしょうか。

 

もし興味がわいたという方は、この機会にぜひどうぞ。

 

 

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