第三者が戸籍の請求を行う場合、委任状は必ず必要??【戸籍法第10条、第10条の2について】

 

 

来月1日に改正不動産登記法が施行され「”相続”を原因とした不動産の名義変更の義務化」が始まります。不動産の名義変更を行うための法務局への登記申請はもちろん、金融機関の預貯金解約の手続き等においても、手続きの添付書類として相続の関係者の一定の範囲の戸籍の提出が必要になります。

 

本人が窓口に行って自分の分の戸籍を取得する場合はいいとして、第三者が戸籍を取得する場合、交付請求の際に委任状は必要になるのでしょうか?

 

戸籍の請求について定めた戸籍法の第10条の条文は以下の通り定められています。(e-Gov法令検索より。太字・下線は当事務所注)

第十条 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
② 省略
③ 省略

 

上記の規定によると、戸籍に記載されている者すなわち本人、この他配偶者、直系尊属(本人の父母、祖父母等)、直系卑属(本人の子、孫等)についてこの範囲内であれば委任状を用意する必要は無く戸籍の交付請求をすることができそうです。ですが、相続の手続きで必要な戸籍が第10条第1項の規定の範囲内に止まるということはそう多くありません。

 

上記の規定の範囲外の方が戸籍を交付請求する場合、委任状による代理取得の他、同法第10条の2の規定に基づき請求に正当な理由がある一定の第三者からの交付請求を認めていて、この規定に該当する”第三者請求”の場合は委任状を用意する必要はありません。

 

戸籍法第10条の2(e-Gov法令検索より。カッコ書き・太字・下線は当事務所注)

第十条の二 前条第一項(第10条第1項)に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
②~⑥ 省略

 

総務省中部管区行政評価局が、この戸籍法第10条の2の規定に基づく正当な”第三者請求”にもかかわらず、市町村の窓口で委任状の提出を求められる事例が相次いでいると14日に発表していました。もうかなり前からいわゆる行政のスリム化によって公的証明書の窓口での交付を民間の業者に委託している自治体が多く、担当職員の周知徹底がなされていないのでしょうか。

 

戸籍の交付請求については、下記のリンク先(法務省ホームページ)で要領が公開されています。正当な”第三者請求”であるのも関わらず、窓口で「委任状がないので交付できません」と言われてあきらめてしまうことのないよう、相続手続きで戸籍の取得を行う方はご一読ください。

 

法務省ホームページ 戸籍ABC(Q6~ ) → https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00032.html

 

讀賣新聞オンライン(ヤフーニュース)  戸籍謄本 委任状は「不要」 第三者請求 窓口で提出要求相次ぐ 3/15(金) 11:31配信 → https://news.yahoo.co.jp/articles/7e4badfa37e87b556dfdb98dbb826ebeca3a3ac6

 

総務省ホームページ 中部管区行政評価局における地域計画調査等の実績 → https://www.soumu.go.jp/kanku/chubu/menu_11.html

令和5年度のテーマ名「戸籍謄本等の第三者請求について~市町村ホームページ上の適切な記載を中心として~」の報道資料が上記讀賣新聞の記事の補足に良いです。

 

 

 

 

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