株式会社の代表取締役の選任、あなたの会社の定款の規定は?
日本にある(中小の)株式会社の中でもその割合が多いであろう取締役会非設置の株式会社においては、実は代表取締役の選定は必須ではありません。会社法第349条は以下の通り規定されていて、
(e-Gov法令検索「会社法」より抜粋。下線は当事務所注)
上記第2項に規定されている通り、第1項但書の規定によらず(取締役が1人の場合は除いて)代表取締役を定めなかった場合は、取締役全員が会社の代表となります。ただ、(中小の)取締役会非設置の株式会社はそのほとんどが上記第3項の規定に基づき代表取締役を選定していることと思います。
代表取締役の選定の方法について、第3項には「①定款、②定款の定めに基づく取締役の互選又は③株主総会の決議」と選択肢が3つ用意されているのですが、①は定款に直接記載して代表取締役を定めてしまうやり方であり、この場合は代表取締役が変更する度にいちいち定款変更をしなければならず、はっきり言って面倒くさくて現実的ではありません。
このブログをお読みいただいている(中小の)取締役会非設置の株式会社の皆さまの定款には、第4章の「取締役及び代表取締役」の中にきっと以下のように規定されている条項があると思います。
(代表取締役及び社長)
第○条 当会社の取締役が1名の場合は、その取締役を代表取締役とし、取締役を2名以上置く場合は、株主総会の決議により代表取締役1名を定めるものとする。
2 代表取締役を社長とし、当会社を代表する。
3 当会社の業務は、代表取締役社長が執行する。
上記の例の下線部のように代表取締役の選定を株主総会の決議により行うという旨の記載になっている方には今回特に申し上げることはありませんが、「取締役を2名以上置く場合は、取締役の互選により代表取締役1名を定めるものとする。」という記載になっていた方、御社がもし「株主イコール役員」のような所有と経営の分離のないコンパクトな規模の株式会社の場合、代表取締役の選定は「取締役の互選」から「株主総会の決議」に変更することをおすすめします。
なぜって、理由はひじょーに地味なものですが、特にこれといったメリットがない(株主と取締役が同一人物なので、株主総会で決議できることをわざわざ改めて取締役同士で話し合う必要ないはずです。そもそも株主総会も、株主としての立場と取締役としての立場の1人2役で出席した人物同士で総会が開かれているけっこうヘンテコなシチュエーションなんですが・・・)し、代表取締役の選定を株主総会の決議により行う場合と比べて、代表取締役の変更の手続きの際に臨時株主総会議事録の作成に加え取締役決定書を作ったり定款の写しを準備したりとちょっと手間が増えるんです(丸投げで司法書士に役員(代表取締役)変更登記を依頼すると、費用の面で毎回1~2万円の差があるかも・・・)。
役員1名のみのとある株式会社の代表取締役の改選劇場(定時株主総会の1コマ)
登場人物 株主:A氏 代表取締役:A氏 本総会の議長:A氏 (全て同一人物)
【議長A氏】:「代表取締役A氏が取締役の任期満了により退任するので、後任者を選ぶ必要がありますが、誰がいいでしょうか?」
【出席株主A氏】:「代表取締役A氏の再選重任を要望します!!」
【議長A氏】:「株主A氏より代表取締役A氏再選の要望がありましたが、皆さま、いかがでしょうか?」
【出席株主A氏】:「A氏再選に賛成!!」
【議長A氏】:「代表取締役A氏が再選重任することに満場一致で可決しました!」
【代表取締役A氏】:「ありがとうございます。喜んで就任を承諾いたします!」
1人役員の株式会社の場合、取締役の任期満了に伴う改選時には上記の劇場を大マジメに「定時株主総会議事録」に書き起こして、法務局に印紙代10,000円を払って改選の登記を行います。。。
ここまでお読みいただいたコンパクトな規模の株式会社の皆さま、早速御社の定款の規定をチェックしてみてください~