ある犬の物語。【私の読書記録Vol.2】
今回は、ガブリエル・バンサンの「アンジュール-ある犬の物語」(BL出版)という本(絵本)をご紹介します。
ガブリエル・バンサン(1928-2000)は、「くまのアーネストおじさん」のシリーズが世界10数か国で出版されるなど各国で高い評価を受けているベルギーの絵本作家ですが、この「アンジュール」は、私が書店員時代に、その日お休みだった児童書担当の代わりに入荷した本を売り場に品出しをしようと朝入ってきた本を整理していた時に、表紙の犬と目が合い、品出しを忘れて惹き込まれるようにページをめくり、そのまま購入するに至った絵本です。
この本は、鉛筆のみで描かれていて、モノクロで、作中言葉が一切出てきません。
一匹の犬が、ある日車の窓から捨てられて、主人を探して、街の中や海辺をさまよい、疲れ果てて、そして最後に1人の少年と出会うまでの短い物語ですが、一切言葉が無いために想像力がとにかく掻き立てられます。
街中を走り回る犬の息遣い、怒鳴ってくる人間の声、砂浜に打ち寄せる波の音、全てが生き生きと頭の中に聞こえてくるようです。
ガブリエル・バンサンは本当に素晴らしい線の描き方をする絵本作家だと思います。見る人がみれば、「ただの鉛筆の線と点」なのかもしれません。ですが、特に海岸のシーンなんて、本当に小さい点で描かれた犬から、やるせないほどの寂しさが伝わってきます。
また、子どもとか大人とか分けることなく、一緒になって、何度でも、味わうことができる作品だと思います。
最後に1人の少年と出会った犬がそのあとどうなったのか、、
興味がわいた、という方は、ぜひどうぞ。