契約上の期間、11月15日の1年後はいつ??【私の読書記録Vol.12】

 

今回は、法律実務家の方はもちろん、会社の法務担当や、金融機関、不動産関係など、普段から「契約」に接することの多い方におすすめの辞典をご紹介します。(読書記録というのはなんだか少し違う気もしますが)

 

今回ご紹介するのは、新日本法規の「(改訂版)契約用語 使い分け辞典」です。日本組織内弁護士協会が監修したこの本は、「期間・日時・数量を表す用語」「前後の関係を表す用語」「会社に関する用語」「会議に関する用語」など、ジャンルやシーンごとに、契約用語を正しく使い分けることができるよう、同じ読みの言葉や似た意味の言葉の正しい使い方・意味を簡潔に分かり易く説明しています。

 

先日家賃支援給付金の申請代行の依頼を受けたお客様から賃貸契約書の写しをお預かりして内容をチェックしていたときのこと。契約期間が「2017年4月30日 から 2020年4月30日 までの 3年間(実際のものと日付を少し変えています)」と記載がありました。

 

民法第139条と第140条に期間の起算についての定めがあり、条文は以下の通りです。

 

(期間の起算)

第百三十九条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

 

日について定めている140条の規定通りで行けば、原則初日不算入なので「2017年4月30日~2020年4月30日で3年」という書き方は間違いではありません。ただ、常識的に考えて不動産の賃貸契約は契約期間の初めの日よりも前に締結されるはずです。なので、但し書きが適用されて、2017年4月30日(午前0時)から始まった契約期間は、3年後の2020年4月29日の23時59分59秒までをもって、ちょうど3年間となります。

 

賃貸契約で初日不算入なんてあるのかな?(例えば2017年4月30日の午前10時に契約書にサインして、「はい、あなたは今日からこの部屋(家)に住めますよ」っていう契約の流れなら、初日不算入もうなずけます。)それとも3年と1日の契約がなされたのかな?とわからなかったので、契約上の貸主になっている全国的に有名な大手不動産会社の支社に「原契約の正しい契約期間が読み取れない。正しい期間を教えてほしい。記載が間違っていれば訂正したほうがいいのではないか。」ということを問い合わせました。

 

すると、電話口の方は自分が何を聞かれているのかをよく分かってないまま受け答えをしていたようで、「当社では、最初の契約期間の終期は3年後の締結日と同じ日の属する月の末日までであり、記載は間違っていない。今まで数多く対応しているが、不備が出たなどの連絡は一切ない」と一点張りでした。はっきり言ってものすごくがっかりしたのと、大手の不動産会社(の支社)が、法律や、自分たちの結んでいる契約条項の内容よりも、ただひたすら経験則で応対してしまっているというところに、すごく危機感を覚えました。

 

最初の契約期間の終期が「3年後の締結日と同じ日の属する月の末日まで」であれば、「までの 3年間」という記載ではおかしいということに気づかなかったのでしょう。そういった文言は裏面の条項にも一切記載がありませんでした。きっと、大手なので、電話の問い合わせ担当は深いところまで知っておく必要はないし、契約書だって、社内の汎用の書式にパソコンで打ち込んだ契約情報をただプリントアウトしたものなのでしょう。ちなみに契約締結日も空欄になっていました・・・。

 

家賃支援給付金の申請様式5-3(契約書上の契約期間に2020年3月31日と申請日が含まれていない場合)についての取扱いが制度開始当初からどんどん変わっているのも、もしかしたら大手の不動産会社が大量に間違った記載で対応していて、そのせいで不備が発生しまくって、とうとう事務局側が対応を変えたのか・・・?とも思いました。

 

話が大分逸れましたが、上記の不動産会社のような恥ずかしいことにならないためにも、すごく役に立つ本です。

 

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